クロッキーとジェスチャードローイングの違い
二つの言葉は混ぜて使われますが、重点が少し違います。クロッキーは短い時間で対象を素早く描く速写全般を指し、輪郭と比率を一緒にとらえようとすることが多い言葉です。ジェスチャードローイングはその中でも、姿勢に込められた動きや勢い、重さがどこに乗っているかをつかむことに集中します。輪郭が多少ずれていても、体の傾きやねじれが生きていれば成功です。この記事では両方を扱いつつ、最初はジェスチャーに重きを置き、時間が長くなるにつれて形と比率を足していくやり方で説明します。比率そのものは人体比率の記事も合わせて読むとよいでしょう。
なぜ短く描くのか
時間に余裕があると、人は目立つ細部から描き始めます。目や指、服のしわに時間を使っているうちに、肝心の体全体がどちらに傾いているかを見落とします。時間を短く区切ると細部を描く余裕がなくなるので、いちばん大事な大きな流れだけを選ぶ判断を否応なくすることになります。この判断を繰り返すことがクロッキー練習の本質です。一枚に長くかからないので失敗しても気が楽で、同じ時間でずっと多くの枚数を描き、さまざまな姿勢を体に覚えさせられます。
道具と資料
速く引けて太さを調整しやすい画材が向いています。鉛筆なら柔らかいB系、木炭やコンテ、先の太いペンもよく使われます。紙は高価なものより、惜しまず使える大きめのクロッキー帳やコピー用紙の束がよいでしょう。指先ではなく腕全体で引けるよう、画面を小さく使いすぎないことが大切です。資料は実際のモデルが理想ですが、難しければ時間に合わせてポーズ写真を切り替えてくれる資料や、動画を止めて描く方法もあります。公園やカフェで人を描くときは、相手が不快にならないよう距離を取り、顔を細かく描き込まないなどの配慮をします。
動きの線から引く
最初の線は、頭から足先、あるいは体の中でいちばん長く続く流れに沿って一気に引きます。これが動きの線です。立った姿勢はゆるやかな曲線、体を丸めたり反らしたりした姿勢は大きく曲がった曲線、片足に体重を乗せた姿勢はS字に近い曲線になることが多いです。ただし、すべての姿勢を曲線にしようとするとかえって不自然になります。踏ん張った脚のようにまっすぐ伸びた部分は直線で対比をつけてこそ、曲がった側が生きてきます。動きの線を引いたら、肩の線と腰の線の傾きを短く示し、二本が互いに逆へ傾いているかを確かめます。
時間ごとの進め方
一度にすべての時間を使うのではなく、短いポーズで体をほぐしてから少しずつ延ばしていく構成が一般的です。以下は一時間あまりの練習の例です。タイマーを使うと、時間が来たら手を止める習慣がつきやすくなります。
- 30秒ポーズを数枚:動きの線と肩・腰の傾きだけ
- 1分ポーズを数枚:頭、胴体、手足の向きを足す
- 2分ポーズを数枚:胸と骨盤を塊で立て、体重の乗った足を示す
- 5分ポーズを数枚:比率を測り、大きな輪郭を整える
- 10分ポーズを一、二枚:輪郭線に強弱をつけ、主な影を一、二か所だけ
線を選ぶコツ
同じ場所に何度も線を重ねると流れが途切れ、どれが本当の輪郭かぼやけます。最初は薄く一度、正しいと判断したところだけ少し濃くもう一度、という程度に回数を減らしてみます。体の外側の線を見るときは、片側がふくらんでいれば反対側はまっすぐか、へこんでいることが多いと覚えておくと役立ちます。肘や膝のように折れる場所は角をはっきりさせ、体重を支える側の線は濃く、力の抜けた側は軽く引くと重さが出ます。手と足は、最初は小さな塊や矢印で向きを示すだけで十分です。
よくある失敗
短い練習でも、描き終えた数枚を並べてみると繰り返している癖が見えてきます。
- 顔から描く:時間が来ても体のない絵になる
- 輪郭をなぞる:外側の線より体の中を通る流れを先に見る
- どの姿勢もまっすぐ立たせる:モデルより傾きを弱く描く傾向を意識する
- 時間が過ぎても直す:区切る練習そのものが訓練になる
- うまくいった紙だけ残す:失敗した紙から癖を見つける
続けるための工夫
クロッキーは一度に長く続けるより、短く頻繁に行うほうが効果を感じやすい練習です。ほかの絵を描く前の十分ほどを手慣らしに使うだけでも十分です。日付を書いておき、一か月ほどたってから最初の紙と比べると、線が減り姿勢が大胆になった変化を確かめられます。同じ姿勢を時間だけ変えて描き直したり、描いた姿勢を見ずに記憶でもう一度描いたりするのも観察力を伸ばすよい方法です。長く座って描くときは、ときどき立ち上がって肩と手首をほぐしましょう。
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